書類を整理していたら当時の記録が出てきたので、こちらに転載する。(固有名詞などは伏せています)
20120305 父上の大腸ガン手術に関して
天気:大雨
時間:9:30-13:00
【手術について】
手術は無事に終了。股関節手術による血栓飛散の影響も無かった。今後1週間で合併症の発症などの経過観察を行なうそうだ。
摘出された腫瘍(ガン)を見る。切除された大腸は30cm程度。腫瘍の大きさは長さ3.0cmx幅1.5cmx厚み2.0cm程度。
素人でも、一目で「これがガン化した部分なんだ」と判別できるほどに、黒く大きい。医師によれば「内視鏡手術で取れるレベルではなかった」とのことだ。
隆起したように見える状態は、文字通り「育った」腫瘍である。例えが悪いが、「へび花火」を想像してもらえばイメージしやすいかも。
2週間ほどかけて、原因や転移などを調べるそうだ。ちなみに切除した大腸は焼肉のホルモンをイメージすれば良い。ニオイは感じなかったが、顔を近づける度胸はなかった。医師(助手)が見せてくれた面は「大腸の内側」である。その壁面に腫瘍が隆起している。腫瘍ができた箇所以外はツルンとしている。外壁に白いブニョブニョしたものが付着している。脂肪らしい。少し余分に付いている様で「良い食べ物を召し上がってらっしゃるのかな~」と笑顔で言われた。それは否定しない。
【父について】
術前には「適当にやってくれ」と冗談ぽく言っていたらしいが、オペ室から帰ってくるときには叫びながら帰ってきた。
「痛い痛い!なんで、こんなことするねん?!」とおよそ大人の発言ではない。無理もない。もう3年も前になるのか、「脳炎」と「脳梗塞」で生死を彷徨って以来「失語症」なる状態になり、思考力なども平常時と比較できない状態になっている。一気に「おじいちゃん化」してしまった。
病室でも意味不明なことを口走っているし、点滴しようとする看護師の手も撥ね退ける。
挙句の果てには、ベッドに拘束されてしまった。睡眠導入剤が効いて眠りについたが、寝顔は99歳で亡くなった祖父の顔とそっくりだ。生前は、まるで似ていなかったと思うが、、、。
74歳である。
74歳って、これほど老人なのだろうか?
身長180cm強の父親が、
あれほど偉そうにしていた父親が、
孫にはとことん甘い人が、
本当に「おじいちゃん:老人」になっているのだ。
これには寂しさを感じざるを得ない。
多分、父自身には「孫と遊ぶ風景」とか「こんなことをしてやるんだ」とアバウトながらイメージがあっただろう。なんだかんだ言っても孫は可愛いのだろう。
それは、孫達3人(当時、10・8・6歳)と接している時の笑顔で判る。ただ、本人がイメージしていた接し方とは随分違っているはずだ。
10歳の甥は平常時の祖父と触れ合っていた期間が長く、恩恵を受けている。だから「以前のおじいちゃんには戻るの?」と疑問を持つのだ。8歳と6歳の娘はどうだろう?
そして、自分は父の姿を将来の自分に置き換えてみる。
これは仕方ないことではないか?
妻には分からないだろうが、紛れも無く将来の自分の姿のシミュレーションだ。
「脳炎」になることなどは不明だが、自分が老いたときの姿がそこにあるのだ。
なんとも言えない切なさを感じる。